続・禁止令を解く 間違えないようにの罠

先日のブログ、禁止令を解いてポジティブな言葉に言い換えよう、のご提案をお試しいただいた方、いかがでしたか? 

その際に楽譜に書き込みの実例をいくつか挙げましたが、私がそもそも挙げなかった否定文がありました。 

それは、間違えないように、です。(タイトルに書いちゃってますが。) 

ミスをなくしたい。わかります。そりゃ誰しもちょっとは思うことです。

が、これも否定形です。

そして禁止令のなかで最も指名手配して書き換えたい言葉なのです。

今ミスという言葉を書いた時点で、たとえなくしたい、という文であっても、既に私の中のアーティストはご機嫌ななめです。

アーティストとは心の在り方にあり、と考える私たちがめざす、心と体にやさしい演奏の実現をサポートするという観点でお話しする時、人間の心身のメカニズムを無視した語法は役に立ちません。

否定形を人体は理解できないと、以前も書きました。

では、心身のメカニズムを活用するにはどうするかというと、

やりたいことをやろう、と考えるのです。

練習はもちろん必要です。その時、間違えないために練習するのと、ショパンのこの美しさをみんなに聞いて欲しい、と思って練習するのと、あなたの心境は寸分たがわず同じでしょうか?

もう、”練習”という言葉のイメージさえ異なってきます。思い切って演奏と呼ぶのも有効です。 

私はショパンをこう弾きたい!そのために今日演奏する 

私はコンサートでこれを弾きたい!そのために今ピアノを弾く
 

これらは内在的動機といえます。内発的、自発的動機で、積極的な欲求です。

人間は、能動的な欲求に突き動かされて動くのが得意です。また、その理由は、具体的であればあるほど好都合です。
 

この本面白い!読破したい!
VS 読書感想文を書かなければいけないから読む
 

そんな小学生のモチベーションと同じく、自らピアノを弾きたい私たちも、

 ショパンが美しいから(美しく弾くためにピアノに向かう)
VS 間違えたくないから(機械的な練習をする) 

では、心を含めた全身システム御一行様の、演奏へのご協力具合が全く違ってくるのです。

ここを読んでいる方なら、ポジティブな動機をそのまま演奏の根幹に据えましょう。せっかく演奏するのですから、システム御一行様のご協力が最大になり、なるべく成果の出る言葉を自分にかけてあげましょう。
 

この第二主題がきれいだから、美しく弾きたい。
この和音が好きだから響かせたい。(いい言葉があったら是非教えて下さい!)
優雅に。 

なんでもいいのです。やりたいことを肯定形で表せれば。 

それから、無理しなくていい、頑張りすぎなくていい、という”ない”表現はセーフです。
 

うまくなりたい、もOKですが、私はまだ下手だから、はお勧めしません。下手な自分だから練習しなきゃいけない、と自分を否定しているのです。(はい、またもご機嫌斜めになりました。そういうご自分の中のアーティストの声を、無視しないでくださいね。大事なサインですから。)
 

ちなみに、ポリーニだってアルゲリッチだって、自分のテクニックには欠点があると言っています。
つまり、上手くなればいつかは悩まなくなるという訳でははないのです。 

歌の伴奏で、”この曲はノーミスを目指さなくていいですよ。今まで本番でできた人はいなかったから”と歌い手さんに一言いただいて、どんなに楽になったことか。

それどころか、かえってノーミスで弾けてしまったりします。大事なのは、同じ流れにのることです。歌は呼吸して生きています。こちらが息をつめてノーミスを達成しても音楽としては面白くないですよね。

音楽のことを考えて演奏するから、やりたいことを考えているから、結果いい演奏になります。

今日こそミスしないで弾くぞ!のような直接的アプローチにはいい加減うんざりしません?

本番を楽しめる人は、そこに至るまでにポジティブに考えて練習しています。もちろん時に自分に厳しく、テクニックの研鑽は欠かさないでしょうが、根幹にあるのは、こういう音楽をやりたいという動機であるはずです。

今日のおすすめミッション:
この曲をあなたはなぜ弾きたいか?どう弾きたいか?なにを聴いてもらいたいか?その答えを演奏の動機にしよう!

きたがわかおり

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